今回は採用についてお話ししたいと思います。
私のところは承継開業なので当初のスタッフは全てそのまま引き継ぎました。最初はうまくいっていたのですがやはり方向性の違いでやめていくスタッフもいましたし、残っているスタッフもいます。
一般的に小規模の事業所においての離職率は3年で50%だと言われているので、ある程度は仕方がないと思うのですが、そうなった時に次にどのように人材採用すれば良いのかが問題になってきます。
今回の採用に関する話は、私が大宮エヴァグリーンクリニックと東京泌尿器科クリニック上野において実際に培ってきた経験と、私が常に学んでいる医療経営大学での学びを統合したものになっております。
採用の状況は年々変わってきている
ひと昔前は働き手の方が雇う側より不利な状況で有効求人倍率も1倍以下という状況でした。当時はぜひ雇って欲しいという人が多く、大げさな言い方になりますが雇う側、病院側が「雇ってあげている」という感じでした。
ところが現在は色々な職種が増えてきたことなど様々な要因で勤務する人の選択肢が増えてきました。有効求人倍率も2倍を超えています。コロナの影響で一旦は下がったとはいえ、これからは雇う側、病院側が非常に厳しい状況になってきます。
良い人材を確保するためにも相手のニーズや働き方をしっかりと見極めることが大切です。
今、新しい人たちが求めていること
今の人たちは自分のプライベートを大切にしたい、自分の時間をいかに確保できるかということを重視する傾向にあるため、以前のように単に年収や福利厚生が充実しているからといってそれが決め手になることは少ないようです。さらに最近では副業や起業も認める条件であることがより求職者に認められる状況になっています。
私のグループの病院では開業医になりたい人を募集しています。看護師さんでも独立志向がある方を積極的に採用しています。意識が高く、うちで勉強をして独立を目指して欲しいという思いからそのような意識のある方を積極的に採用するようにしています。
最近の求人の仕方・履歴書の見極め方
最近の応募方法としては、indeedやとらばーゆなどで、とりあえずクリックしてエントリーするような気楽な応募が主流です。
この方法でのエントリーは一つの職場に執着しない、辞めやすいという特徴もあります。何故ならまたクリックして探せば良いからです。
履歴書においてもいくつか見極めるポイントがあります。私が気をつけていることは手書きの場合、字が綺麗で読みやすいか、誤字脱字はないか、書き方は整っているかなどを見ます。
職歴欄に関しては職と職との間に隙間がないかも注意しています。女性の場合ですと結婚や出産育児などで隙間の期間があるのは仕方がないことですが、これといった決定的な理由がないにも関わらず隙間の期間があるのは問題がある場合が多いと思います。要するにその期間は何も仕事をしていないということで求められていない時間が多いと判断できるからです。
また、はじめに抱く「ん?」というようなインスピレーションも大切です。履歴書を読んだり、お話ししたときに何かしらの不安や懸念を感じることがあると思います。最初の懸念を打ち消して実際はしっかりと働ける人なのではないかと期待して採用しても、実際にはやはりこちらが求めている人材ではないということが多いです。最初に抱く疑念の妥協はしないほうがいいと思います。
使用期間、トライアルをもうけると良い
最初の懸念が外れてその人が本当は職場に適しているかもしれないということもあります。それを見極めるためにも面接の後に1日トライアルで働いてもらったり、3ヶ月などの期間を設けて試用期間として働いてもらうことが重要です。
当院でも面接後に医師、看護師、事務員全ての方に必ずトライアル期間を設けています。
退職する理由
退職する理由として、一般的には他にやりたいことがある、お給料が見合わないなど色々とあげますが、本音として一番の理由は上司との馬が合わなかったということです。結局のところ上司や経営者のやり方が気に入らない、馬が合わないということが最大の理由になっています。
ユニークな採用方法もある
ここでご紹介する例は一例ですが、このようにユニークな採用方法や愛される企業作りををしている会社もあります。その会社が働きやすい良い会社だと宣伝する効果もあります。
◉スープストックトウキョウ
人と人とのつながりを大切にするという理念のもと、社員の独立支援制度や女性のみならず男性の育児休暇の奨励、退職してもその後10%割引でサービスの提供を受けられるなどの制度があります。
◉Ford社(フォード・モーター)
平均賃金が安い時代に1日当たりの給料を2倍の5ドルに引き上げ、働く人にも自社の車を購入させて普及させ、労働者のモチベーションもアップさせました。その結果応募者が退職者を上回り続けることになったのです。
◉メルカリ
忙しい社員が良いパートナーと出会う機会が少ないことを懸念し福利厚生でペアーズというマッチングアプリを無料で使用することができます。また、不妊治療や介護休業などの支援制度も充実させて働く社員への思いが伝わります。
◉ビズリーチ
即戦力になる人事採用の大手エージェントですが、エントリーした優秀な人材を直接ビズリーチで採用してしまうという効率の良い採用方法をとっています。
このように魅力的な温かい社員を思った福利厚生をつけることは多くの求職者を引き寄せるツールにもなります。このようなユニークな採用方法も参考になれば良いと思います。
採用者からの連絡にはこまめに返信
採用者からきた返信にはすぐに対応しましょう。現在は多くの媒体がありますし求職者も多数の職場をエントリーしているので、対応が遅いとすぐに他に行ってしまいます。
リアクションはできるだけ早く、できれば1時間以内がベストです。
やはりリファラル採用
リファラル採用とは、働いている職員やその知人などのつながりで人材を獲得する推薦採用のことです。知り合い関係での採用なので信頼感、安心感があり比較的長続きする傾向にあります。今働いている人からの紹介であるということは、その職場がすすめたくなるような魅力的な職場であるという証明にもなります。
当院では大宮エヴァグリーンクリニックで働いている検査技師さんのご主人が、東京泌尿器科クリニック上野で働くことになりました。夫婦揃って当院で働いていただけるというとても嬉しい事例です。
推薦をするということはその方の能力やクオリティの保障にもなります。採用コスト面においても、求人媒体等を利用する場合は看護師さん一人雇うのに20万〜30万円、事務員さんで10万円かかることもありますが、その金額がかからないこともリファラル採用のメリットと言えます。職場の環境を健全に綺麗に保つことがより良い組織作りにつながり、良い人材確保にもつながると思います。