第4回目では、私の著書でも書いておりますが、私は25年続いた大宮エヴァグリーンクリニックを承継して開業しております。そこは消化器科のクリニックだったのですが、私はそれまで泌尿器科を専門としてやっておりました。科の違う私がそれを継ぐことになった経緯をここで説明したいと思います。
あまりない承継開業の形だとは思いますがこれからスタンダードになっていく可能性もありますので、そのメリットについてもここで書きたいと思います。
10年目までは泌尿器科専門医として
私は泌尿器科専門医として10年間働いておりました。それまでは初期研修医の時に消化器科とか他の科を勉強したくらいで、泌尿器科以外のことをきちんと勉強したことはありませんでした。
医師になってからいつかは自分で開業したいなという思いはありました。ですが、泌尿器科をゼロから開業するのは患者来院数がどれくらい見込めるのか等リスクがあると考えていました。そこで他の科を承継して、ダブルの専門を持って開業をしようと考えたのです。
消化器人間ドックのクリニックを承継すると決めた
10年目にして新たな専門を持とうと考えました。ダブルの専門を持てば自分にとっても患者さんを幅広く診察できますし、患者さんにとってもトータルでサポート&ケアができると考え、新たに消化器科を勉強しようと決めました。
そこで計画を立てました。自分に火をつけるためにもあるクリニックを承継すると決めて、正式に承継となるその日までにその専門の科を勉強しようと決意しました。
実は泌尿器科にいくと決める前にもともと消化器科にも興味があったので消化器科人間ドックの承継できるクリニックをサイトで探しはじめました。
いくつかのクリニックを面接し見学していく中で、大宮エヴァグリーンクリニックが規模的にも場所的にもいいなと思って進めていきました。以前のお役立ちコンテンツでも書きましたが、承継すると決めてから紆余曲折あり正式に僕が大宮エヴァグリーンクリニックを承継するという流れになりました。
(泌尿器科の私が、というのが前の院長からするとネックだったようです。やる気があるのはわかってくれていたのですが、心配にはなりますよね。結果的には他にも10人以上承継希望の消化器科の医師がいましたが私が選ばれました)
承継するのが2年後だったのでそれまでに消化器の勉強をして、また人間ドッグのクリニックだったのでマンモグラフィーの読影もしなければならなかったですし、産業医の資格も取らなければなりませんでした。とにかく承継までの2年間を死ぬ気で勉強をして、承継のために自分に足りないものをしっかりと埋めていこうと決めたのです。
泌尿器科医として勤務していた病院で消化器外来・胃カメラを勉強
どうやって消化器外来・胃カメラの勉強をしていったのかというと、自分が最後に働いていた病院に仲の良い消化器科の先生がいたのでその先生から消化器の胃カメラを学び、外来の時も横について教えてもらいました。
胃カメラは模型から練習してその消化器科の先生の許可を得てから患者さんに対して行いました。自分の泌尿器の患者さんにも同意のもとやらせていただいたこともありました。それで自信がつくようになってからは外にアルバイトに行ったりもしていました。そのようにして胃カメラは習得しました。
当然自分は泌尿器科のオペや外来もしていたのですが、その合間に消化器の外来を見学させてもらったり胃カメラをしたりしました。とにかく忙しかったですね。
外来についても休みの日に消化器の外来のアルバイトに行き勉強しました。
産業医の取得
2年かけて産業医の講習を受講し、単位を取得するために産業医の講座に通いました。これはただ通えば良かったので、そんなにプレッシャーはありませんでした。
マンモグラフィー読影認定医を取得
これが非常に大変でした。マンモグラフィー読影認定医になるための試験は、マンモグラフィーを100人分見てその中に悪性がどの乳房にあるのかを判定するという、乳腺外科医や放射線科医でも落ちることのある難しい試験です。
そこで私は世に出ているマンモグラフィ読影の本をほぼ全て買って勉強しました。また、勤務していた病院のマンモグラフィーを読影してわからないところはその病院の乳腺外科の先生に教えてもらい、無事にAランク認定で合格しました。
いざ承継開業へ
マンモグラフィー読影認定資格も取得し、消化器の胃カメラも勉強して産業医もとって開業に際して自分に足りないものは全部埋めていったわけです。
そうして開業して2年経った今はマンモグラフィーの読影は外注し、消化器科の先生も外からきてもらっています。私伊勢呂自身の経営に割く時間が多くなってきたためです。
となると結局のところ最初から全部外注で済んだのではないかと思われるかもしれません。しかし私は最初から全てを外注していたのでは周囲の納得を得られないだろうと思ったのです。他のスタッフが私についていきたいと思うかどうかもわからないですし、私は学びたいという気持ちもありましたから積極的に自分から学ぶような方針をとりました。
まずは自らが学んで実践した上でしばらくしてから自分は胃カメラやマンモグラフィ読影は外注するという形をとりました。結果的には自分で学んで大正解だったと思います。
他の科を学ぶためにさすがに一から違う施設で研修医としてやるのは難しいと思います。自分は泌尿器科の診療を継続しながら消化器科を学ぼうと思ったので、図々しく空き時間に他科の消化器の先生や乳腺外科の先生に頼みました。みなさんご自分の仕事もある中でそれを置いて色々と私に教えてくれました。ご教授いただいた先生方には本当に感謝しています。
私は人に恵まれて運が良かったというのもあるかもしれません。ですが、意外と図々しく頼むとやる気のある人間に対しては無下にすることなく快く受け入れてくれるのではないかと思います。図々しいかなと思いつつ頼んでみることもいいことだと思います。
最後に、ダブルの専門を持つことは医者としての幅も広がりますし、開業には非常に有利だと思います。このような開業の仕方もあるのだと知ってもらえたら幸いです。