お役立ちコンテンツの第一回目は、開業医と勤務医の内情について話そうと思います。
私伊勢呂は、11年間勤務医を務めたのち開業しました。開業してほぼ2年経とうとしており、開業医の生活についてはある程度把握してきました。開業医の生活についてあまり知られていないところが多くあります。私が分かる範囲で開業医と勤務医の実情やその違いについて説明していこうと思います。
開業医と勤務医の勤務時間の違い
勤務医と開業医で大きく違うのは当直の有無だと思います。勤務医の方だと多い人で月に4、5回する人もいれば1、2回の人もいます。
開業医の場合は当直というのはありませんが、医師会の救急当番をやることにはなります。医師会の救急当番というのは開業医の医師たちが持ち回りで回していて、大体4ヶ月から半年くらいに1回、当番が回ってきます。
救急当番は当直ではないので、夜通しということは開業医になった場合ほとんどありません。ただし、アルバイトで他の病院で当直に携わる先生もいらっしゃいます。
勤務時間についてですが、勤務医の場合朝8時半くらいから残業がなければ17時まで、休憩はあまり取れないというのが主なパターンです。
開業医の場合は朝9時から午前診療を3、4時間行い、休憩を2時間程とり、午後診療を3、4時間行い大体18時から19時には終業となります。残業というのはほとんどありません。
すごく流行っているクリニックなどはその時間内に終わらないということも多々あります。
開業医と勤務医のお給料の違い
勤務医のお給料は10年目を超えると年収1500万円から2500万円程度です。アルバイトをする量によって金額の変化はありますが、大体がこの範囲内だと思います。
開業医は個人事業主の場合、売り上げから経費を引いた分全てが給料となります。例えば経費が2000万円の場合、5000万円売り上げたら3000万円の年収になり、1億円売り上げたら8000万円の年収となります。
医療法人の場合、自分で給料を決められます。この給料は基本的には1年間固定になります。自分の働きに見合った給料を自分で決めることになります。大体1500万円から4000万円に設定している先生がほとんどだと思います。
ただ、経費を開業医は使えるので金銭的に自由が効くのは開業医なのかなと思います。
開業医と勤務医の職場での人間関係の違い
人間関係の違いは、勤務医の場合100人から200人程度の他の科の先生をはじめ、看護師さんや様々な職種の方々と触れ合います。人の入れ替わりも多いことから、毎日固定した人たちというよりも病院内のいろいろな人と顔を合わせることになります。
開業医の場合ですと多くても20人、少ないと3、4人の同じ人と毎日顔を合わせることになります。そのため勤務医でも多少はあるとは思いますが、開業医の場合一人の人と人間関係が悪化してしまうととても気まずく仕事がやりづらくなってしまいます。
勤務医の場合は大抵院長や看護師長が新しいスタッフや医師を人選をするのに対し、開業医は自分と相性が良さそうな人を自分で選ぶこともできるため、その点はメリットと言えます。
開業医と勤務医の仕事外での人間関係の違い
勤務医の場合は学会、勉強会くらいでしかお付き合いがなく、仕事外で仕事のために誰かとお付き合いをするということはほとんどないかと思います。
開業医の場合は医師会に属していることが多いので医師会の先生などのお付き合いが多くなります。また、近隣の開業医同士で飲み会などの交流をする機会もあります。
医師関係だけでなく、経営者の会などで他業種の経営者さんたちと親交を深めることもあり、経営方面の情報などを得ることもできます。
開業医になるメリット
開業医は自分一人だけではなく、代診の先生を雇うことにより自分の自由な時間を確保できます。1週間の勤務時間も自分の好きなように決めることができます。たくさん働きたいと思えば、集客に力を入れてフル稼動することもできます。反対に集客にこだわらず、じっくりとゆっくりと働きたいと思うならばそれに沿うような集客方法、シフトを組めば良いでしょう。
その点勤務医は上から与えられた仕事量や院長が求める売り上げのために働かなければいけないので、よほど仕事が出来る人でない限り自分の時間を自由に確保することができません。
開業すると基本的に経費は仕事上で使うものではあるけれども、自由に経費を使えることで金銭的な自由度も高くなります。開業医は一国一城の主人になるので、時間や金銭をはじめいろいろな点で自由であるということが最大のメリットではないでしょうか。
開業医になるデメリット
他のお医者さんと接触する機会が少なくなります。クリニックによっては医師が自分だけで数名の同じスタッフだけと毎日接することが続き、殻にこもりがちになります。そのため情報なども自分から何か行動を起こさない限り得ることができません。
このような人間関係が広がらないデメリットに備えて、私がお勧めするのは開業医仲間のコミュニティに参加するということです。私は医療経営大学というコミュニティに入っています。ここではひとまとまりで3、40人の開業医が集まり、切磋琢磨して経営や医療の相談、情報交換をしている会です。
また開業医の大きなデメリットして昨今ではコロナなど社会的影響を受けて集患できず、借金の返済ができずに破産するというリスクがあリます。資金繰りが上手く回らず閉院しなくてはならない可能性もあります。
ちなみにそうなる前に弊社では承継や仲介を勧めたり、M&Aをして事業の売却をすることも勧めています。
勤務医から開業医になるには
勤務医から開業医になるにはいくつかの方法があります。
新規で開業する
まず新規で開業する場合のメリットとしては自分の好きな立地を選択できるということです。院内の内装を自分の好みに仕上げることもできます。スタッフも自分の求める人材を選ぶことができます。ただし、この点においてはスタッフを一から採用する手間を考えるとデメリットと捉えることにもなります。
新規で開業する場合のデメリットとしては、前述したように予想通りに集患が見込めて売り上げが立つのか、運転資金が持つのかなどの売り上げに対する不安があります。一から自分でスタッフを選ぶ手間や思うような人材が見つからないこともあります。開業にあたっての煩雑な手続きも自分でやらないといけません。これらは結構大変な作業です。
承継開業
次に承継開業の場合です。承継開業には親や義理の親から継ぐ場合と、私伊勢呂がやったような第三者から継ぐ開業があります。
親や義理の親から継ぐ場合のメリットとしては、本来ならば5000万円から1億する開業資金がほとんどかからないので金銭的な面においてはノーリスクであるということです。
デメリットとしては、これは私の周りの体験談からも言えることですが、親や義理の親が何かと口出しをすることで自分の思うようにできないということです。
スタッフに前の院長のやり方などと比較され気持ちよく動けないということもよく聞く話ではあります。意外と親の意見は売上にも大きく影響します。
私の知り合いの開業医は新しい試みを親からNOを出され、そのために流行りの検査に乗ることが出来ず、1億円ほどの売上を逃してしまったと嘆いていました。
第三者からの承継の場合、M&Aで買う場合は数千万から1億数千万ほどかかる場合はありますが、あくまでも前院長との契約です。前院長は契約上、相手の経営に不利になるようなことは言えないことになっています。
また、立地は選べませんが承継した後はクリニックを自分の好きなようにできます。そのクリニックに慣れたスタッフもそのままいるのでスタッフを採用する手間も省けますし、私も初めはスタッフから診療方法を教わりました。また、煩雑な手続きも弊社のような仲介業者が全て代行します。
そして最初から売り上げが立っているので運転資金が底を尽きるといった心配もなく、ある程度見込みのたったままスタートを切ることができます。
このように第三者からの承継開業にはメリットが多いと思います。
私の著書『医院の承継開業』にも詳しく書いてあります。ご参考までに。